わが事務所には、看板猫がいます。
といっても、いつもそこにいるわけではありません。
アメリカンショートヘア・レッドタビーの「アメさん」は、自分のペースで事務所を訪れ、自分の仕事を終えると、さっさと次の場所へ行ってしまう。
そういう、幻のような存在です。
アメさんが来ると、まず事務所の扉の前で「開けろ」と催促します。
開けてあげると、今度は事務所内の見回りが始まります。
気になる戸棚、冷蔵庫の扉——ひとつひとつ「開けろ」と言ってきます。
開けないと、開けるまで鳴き続ける、その妥協のない姿は、まさにプロフェッショナル。

そして、一通り確認が終わって満足すると、安心したように別の部屋へ去っていく。
その背中には、どこか貫禄さえ宿っているように見えます。
実はアメさん、私よりもずっと前から、事務所のあるフロアを見回りしていた先輩です。
後輩の私は、まったく立場がありません。
先日、父の日のプレゼントを紙袋から取り出し、袋の中がカラになった途端に、床に置けと催促。
床に置くと、さっそく袋の中に入り、そこから顔だけ出してご満悦のご様子。
あまりにかわいいので、思わず写真を撮ってしまいました。

私は普段から、朝と昼に珈琲を淹れることが習慣となっています。
週末のおやつタイムなどにみんなの分まで淹れて、さあ飲もうか、と席に着こうとすると、気配を感じたアメさんがどこからともなく現れます。
そして、そこは自分の席だと言わんばかりに座っている椅子の背もたれと私の背中の隙間に、するりと入り込んできます。
仕方なく、椅子の前の方に腰をずらし、アメさんのスペースをあけてあげると、今度はアメさんは背中を私の腰に擦り付けてきて、もっと空けろと言わんばかりの催促。
気がつけば私は椅子の端にちょこんとお尻をのせているだけで、アメさんが椅子のど真ん中で丸くなり、私の腰にピッタリと寄り添いながら、気持ちよさそうに眠っています。
しかも今の季節は、その「スリスリ」のせいで私の背中が毛だらけになります。
本当に、アメさんにはかないません。
もう今は抽出したばかりのコーヒーで充たされたコーヒーサーバーをテーブルに置き、椅子に座るときには、気が付くと座布団を避けて、椅子の座面の端っこに腰をかけています。
習慣というのは恐ろしいものですね。

