事業を始めようとすると、行政手続きが立ちはだかることがあります。
- やりたい事業を始めるのに許可が必要ときいた。どうしたらいいのか。
- 建設業で独立したいが、許可手続きなどでいろいろ書類を作ったりするのがよくわからない。
- 飲食店を開業したいけれど、保健所の手続きがよくわからない。
こうした場面で相談先となるのが行政書士です。行政書士は様々な種類の書類の作成を行う専門家ですが、なかでも官公署に提出する書類の作成や手続きは重要な専門分野の一つです。
この記事では、行政書士が扱う代表的な許認可業務を、わかりやすく紹介します。
行政書士の代表的な許認可業務一覧

ひとくちに許認可といっても、業種ごとに必要な許可の種類や手続きの流れはさまざまです。ここでは行政書士がよく相談を受ける代表的な許認可業務を分野別にピックアップし、それぞれの特徴をわかりやすく紹介します。
建設業許可
行政書士が扱う許認可の中でも最も代表的な分野の一つと言えます。
建設業を行おうとする場合、建設業法上は、原則として建設工事を請け負うには許可が必要とされています。(建設業法第3条) ただし、軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可不要(同条但書)とされていることから、小さな工事からステップアップしていこうという場合には、許可を取らずに始める場合もあります。
建設業法では29業種が定められており、以下のような業種が該当します。(建設業法別表第一)
- 建築一式工事(工務店)
- 電気工事業
- 塗装工事業
- 内装仕上工事業
- 解体工事業
建設業許可取得に必要な主な要件
建設業の許可を取得したい場合の主な要件は下記のとおりです。(建設業法第7条等)
要件というのは、その許可を得るのに必要な条件といった意味で、これを満たしていないと許可がもらえません。
- 経営業務の管理責任者(経管)
- 専任技術者(専技)
- 財産的基礎(自己資本要件など)
- 社会保険加入状況の適正性
これらの要件を満たしていることを証明するためには、経歴証明・資格証・決算書類・残高証明書・社会保険の加入証明など、多くの書類を揃える必要があります。
そのため、書類の作成・確認・証明方法の整理などについて、 行政書士がサポートすることが非常に多い分野です。
建設業許可取得後に必要な手続き
- 毎年の決算変更届
- 5年ごとの更新申請
- 業務拡大に伴う業種追加
- 入札のための経営事項審査(経審)
建設業許可には継続的に実施する手続きもあり、事業が拡大するのに伴って行う手続きもあることから、行政書士が長期的に伴走して関わっていく場合が多い分野です。
宅地建物取引業(宅建業)免許
宅地建物取引業(宅建業)免許は、不動産の仲介や売買を業として行う場合に必要となる免許です。宅建士資格を取得したうえで独立を目指す方からの相談が多く、事務所要件や供託金など確認すべき点が複数あります。
宅地建物取引業(宅建業)免許取得に必要な主な要件
- 専任の宅地建物取引士の配置
- 事務所要件(独立性・継続性)
- 営業保証金の供託または保証協会加入
宅建士資格を活かして独立する方からの相談が多い分野です。
飲食店営業許可(食品衛生法)

飲食店営業許可は、レストランやカフェ、キッチンカーなど、飲食店や食品の製造・販売を行う事業を開業する際に必要となる許可です。食品衛生法に基づき保健所の審査を受ける必要があり、厨房設備などの基準を満たすことが求められます。
飲食店営業許可所持に該当する業態
- レストラン
- 居酒屋
- カフェ
- ラーメン店
- キッチンカー
飲食店営業許可取得の流れ
- 保健所との事前相談
- 図面確認(厨房・手洗い・給排水など)
- 営業許可申請
- 食品衛生責任者の設置
ご自分で対応される方もいらっしゃいますが、書類作成や保健所の対応などの手間をはぶきたい方などは行政書士のサポートを受けることもできます。
またこの次の風営法に係る許可との関連性も高く、そちらを依頼される場合に一緒に依頼するということも多い分野です。
風俗営業許可(風営法)

風俗営業許可は、飲食店などにおいて接待行為を伴う場合や、遊技・遊興の提供を行う場合に必要となる許可です。風営法に基づき、店舗の立地や構造など細かな基準を満たす必要があり、専門性の高い分野として知られています。
風俗営業許可が必要な業種の対象例
- キャバクラ
- ホストクラブ
- 麻雀店
- パチンコ店
風俗営業許可取得における主な確認事項
- 用途地域の適法性
- 保護対象施設との距離要件
- 店舗構造・照度・防音
- 詳細な図面作成
また、深夜(0時以降)に酒類を提供する飲食店は深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要です。
書類の作成にあたっては、図面の作成が必要であったり、周辺施設の調査が必要であったりと、非常に専門性が高くなっています。また警察署との事前協議が必須ですので、この分野に詳しい行政書士がサポートすることが多い分野です。
産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法)
産業廃棄物収集運搬業許可は、建設業と並んで行政書士への相談が多い許可の一つです。廃棄物処理法に基づき、運搬車両の確保や講習会の修了など複数の要件を満たす必要があり、複数県にまたがる場合は各都道府県ごとの許可が必要です。
産業廃棄物収集運搬業許可を取得する業者の例
- 解体工事業者
- リフォーム業者
- 金属回収業者
産業廃棄物収集運搬業許可取得の主な要件
- 運搬車両の確保
- 積替え・保管を行う場合の施設基準
- 講習会修了(法定)
- 適正な運搬計画
複数の都道府県にまたがって営業する場合などは、その都道府県ごとに許可が必要となりますので、広域展開する事業者は行政書士の支援が不可欠です。
一般貨物自動車運送事業(運送業許可)

一般貨物自動車運送事業の許可は、トラック運送会社を新たに始める際に必要となる許可です。車両台数や営業所・車庫の要件、運行管理者の選任など満たすべき条件が多く、審査期間も長期にわたるため計画的な準備が求められます。
一般貨物自動車運送事業における対象例
- 運送会社の新規設立
- 引越業者
- 軽貨物から一般貨物への拡大
一般貨物自動車運送事業資格取得の主な要件
- 車両台数(最低台数)
- 営業所・車庫の要件
- 運行管理者・整備管理者の選任
- 資金計画(開業資金の裏付け)
審査期間が長く、数か月かかることもあるため、計画的な準備が必要です。
自動車登録・車庫証明
自動車登録・車庫証明は、行政書士の伝統的な業務の一つとして古くから取り扱われてきた手続きです。新車登録や名義変更、住所変更、抹消登録など、車の所有や利用に関わる場面で幅広く必要とされる手続きであり、身近な業務として知られています。
- 新車登録
- 名義変更
- 住所変更
- 抹消登録
- 車庫証明
2025年の行政書士法改正により、報酬を得て官公署提出書類を作成する行為の規制が明確化され、適法な運用が改めて注目されています。
診療所開設・医療法人設立

診療所開設・医療法人設立は、医療分野において行政書士が関与する場面の一つです。医師は医療の専門家である一方、行政手続きは別領域であるため、定款作成や事業計画書、認可申請書類などの専門的な書類作成を行政書士が支援するケースが多く見られます。
診療所開設・医療法人設立の対象例
- クリニック開業
- 医療法人設立認可
- 分院開設
- 保健所への各種届出
医師は医療の専門家ですが、行政手続きは別領域です。 定款作成・事業計画書・認可申請書類など、専門的な書類作成を行政書士が支援します。
行政書士法改正(2025年)で何が変わった?
2025年6月成立、2026年1月1日施行の行政書士法改正では、
が明確化されました。 従来グレーとされていた領域が整理され、適法な手続きの重要性が高まっています。
行政書士は「事業を始める人の伴走者」
近年は行政機関の手引きも充実し、AIの発達もあり、 「自分で手続きしてみよう」という方も増えています。
もちろん、それで十分なケースもあります。
しかし行政書士の価値は 書類作成だけではありません。
- 事業モデルに応じて、どの許可が必要か
- 許可要件に合わせて、事業モデルをどう調整すべきか
- 将来どんな手続きが発生するか
こうした 経営判断に必要な情報整理 を行い、事業者の負担を減らすことも行政書士の役割です。
許認可はゴールではなく、事業のスタートライン。 本業に集中したい方にとって、行政書士の支援は大きな価値があります。
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